長渕語録
『今日の長渕語録』
楽曲『西新宿の親父の唄』より
📝やるなら今しかねえ
1990年、西新宿の風と、ある「親父」の肖像
おい、聞こえてるか?
あのイントロの、乾いたアコースティックギターの音色が。
1990年。世の中はバブル景気の真っ只中だった。街には高級車が溢れ、人々は浮かれたように踊っていた時代だ。だけど、俺たちの長渕剛は違った。そんな時代に中指を立てるように、アルバム『JEEP』を俺たちの前に叩きつけたんだ。
そのアルバムのA面ラストに収録されていたのが、『西新宿の親父の唄』だった。
この曲を初めて聴いた時の衝撃、今でも忘れられないよな。カセットテープが擦り切れるほど聴いた、あのざらついた質感。ドラマ『とんぼ』での大ブレイクを経て、国民的なスターダムを駆け上がりながらも、剛は決して満足していなかった。いや、むしろ苛立っていたようにさえ見えた。
そんな彼が、ふと立ち止まって振り返ったのが、デビュー前、まだ何者でもなかった頃の自分を支えてくれた、西新宿の小さな店の「親父」の存在だったんだ。
この歌は、実在したその親父へのレクイエム(鎮魂歌)であり、同時に、若き日の自分自身への決別宣言でもあったと、俺は思っている。
「いつか」なんて言葉は、敗北者の言い訳だ
歌の中で、剛はかつての自分を投影した若者に向かって、親父の口を借りて語りかける。
「やるなら今しかねえ」
たった一言だ。
だが、これほどまでに重く、残酷で、そして愛に満ちた言葉が他にあるだろうか?
俺たちはいつだって、何かと言い訳を見つけては「先延ばし」にする生き物だ。
「もう少し準備ができたら」
「お金が貯まったら」
「いつか時間ができたら」
そうやって、自分自身を騙しながら生きていくのが楽だからな。
だが、西新宿の親父は、そして長渕剛は、そんな俺たちの甘えた根性を許さない。
「バカヤロー!」という怒声と共に、胸倉を掴んで揺さぶってくるんだ。
「おい、お前にとっての『いつか』ってのは、いつ来るんだ?
明日、お前が生きてる保証なんてどこにもねえんだぞ!」
そう言われている気がして、俺はいつもこの曲を聴くと背筋が凍るような思いがした。あの頃の俺たちにとって、剛の言葉は単なる歌の歌詞じゃなかった。生きるための「指南書」であり、サボろうとする自分をぶん殴ってくれる「拳」そのものだったんだ。
長渕剛自身が体現した壮絶な「今」
なぜ、この言葉がこれほどまでに説得力を持つのか。
それは、長渕剛という男自身が、誰よりも「今」という瞬間に命を懸けて生きてきたからに他ならない。
思い出してくれ。あの頃の剛を。
痩せっぽちのフォーク青年だった彼が、まるで何かに取り憑かれたように肉体を鍛え上げ、血管が浮き出るほどの筋肉の鎧をまとっていったあの姿を。
ドラマの撮影、レコーディング、そして全国ツアー。殺人的なスケジュールの中で、彼はいつ寝ていたんだ? 俺たちがのうのうと眠っている間も、彼は歯を食いしばってトレーニングをし、ギターをかき鳴らし、言葉を紡いでいたはずだ。
彼は知っていたんだよ。一度きりの人生、燃え尽きるまで走り続けなければ嘘になると。「やるなら今しかねえ」と、自分自身をギリギリの崖っぷちまで追い込んでいたのは、他ならぬ長渕剛本人だったんだ。
あの凄まじいまでのエネルギーの放射。ライブ会場で俺たちが目撃したのは、エンターテイメントを超えた、一人の男の「生き様」の提示だった。彼が汗だくになりながら「やるなら今しかねえ!」と叫ぶ時、それは俺たちへの檄であると同時に、彼自身を鼓舞する魂の咆哮だったに違いない。
令和の時代にこそ響く、錆びつかないメッセージ
あれから30年以上の時が流れた。
時代は変わり、俺たちも歳を取った。
西新宿の街並みも、すっかり綺麗になってしまったかもしれない。
だが、どうだ? この言葉は錆びついたか?
いや、違うね。むしろ、今の時代だからこそ、より一層強烈に響くんじゃないか? 情報が溢れ、選択肢が増えたようでいて、実は何を選べばいいのか分からなくなっている現代。失敗を恐れ、リスクを避け、「ほどほど」で満足しようとする空気が蔓延していないか?
そんな時代に、剛は昭和の頑固親父のように、変わらぬ熱量で俺たちに問いかけてくる。
「お前、それでいいのか? 本当にやりたいことは何なんだ? やるなら、今しかねえんだぞ!」
俺は今でも、何かに迷った時、くじけそうになった時、心のプレイヤーでこの曲を再生する。すると、あの頃の西新宿の、少しカビ臭くて埃っぽい風の匂いが蘇ってくるんだ。そして、剛のアニキが、あのギラついた目で俺を睨みつけてくる。
「ビビってんじゃねえよ。さっさと一歩踏み出せ!」ってな。
最後に:同志たちへ
このブログを読んでいる同志たちよ。
俺たちは、長渕剛という稀代の表現者と同じ時代を生きる幸運に恵まれた。
彼の言葉は、俺たちの血肉となっているはずだ。
「やるなら今しかねえ」
これは命令じゃない。
俺たち自身が、俺たちの人生の主役として生きるための、魂の合言葉だ。
今日もどこかの空の下で、歯を食いしばって闘っているお前に、この言葉を贈る。
さあ、行こうぜ。
俺たちの「今」を、全力で生き抜くために。
今日の長渕語録のもっとも参考となる資料
この熱い想いを再確認するには、やはり公式の歌詞と向き合うのが一番だ。
Apple Music 『西新宿の親父の唄 』(アルバム『JEEP』収録)
長渕剛 OFFICIAL WEBSITE – DISCOGRAPHY『JEEP』

歌詞検索サービス(歌ネット) – 『西新宿の親父の唄』




